冷凍食品は低温で保管するため、常温品や冷蔵品に比べて賞味期限をあまり気にしなくてもよいと思われがちです。しかし、表示された賞味期限は、冷凍保管を続けたからといって自動的に延びるものではありません。期限情報を正しく把握できていなければ、気づかないうちに出荷可能な期間を過ぎ、廃棄や販売機会の損失につながるおそれがあります。
とくに注意したいのが、入庫日と賞味期限の順番が一致しないケースです。先に入庫したロットより、後から届いたロットのほうが賞味期限が短いこともあります。このような在庫を単純な「先入れ先出し」だけで管理すると、期限の近い商品が倉庫に残ってしまいます。
冷凍食品の期限切れを防ぐには、入庫順を基準にする先入れ先出し(FIFO)と、期限順を基準にする先期限出し(FEFO)の違いを理解し、商品や納品条件に合う方法を選ぶことが大切です。本記事では、両者の違いと使い分け方、入庫から棚卸までの具体的な運用ポイントを解説します。
1.冷凍食品でも賞味期限管理が欠かせない理由
賞味期限は、未開封の状態で表示された保存方法を守った場合に、おいしく食べることができる期限です。冷凍食品も例外ではなく、表示された温度帯で保管しながら、商品ごとの期限を継続して管理する必要があります。冷凍庫に入っているという理由だけで、期限管理を止めることはできません。
事業者間の取引では、表示された賞味期限だけでなく、納品時に一定の残存期間が求められる場合があります。たとえば、賞味期限まで日数が残っていても、取引先が定める納品期限や出荷基準を下回れば、その取引先には出荷できないことがあります。管理上は「まだ期限内」でも、販売可能な在庫ではなくなる点に注意が必要です。
期限管理が不十分だと、期限切れによる廃棄ロスだけでなく、出荷直前の在庫不足、予定外の値引き、期限違いの誤出荷、問い合わせ対応の増加などが起こりやすくなります。冷凍食品の品質と取引先からの信用を守るには、温度管理と期限管理を一体で考えることが重要です。
在庫は商品単位ではなくロット・期限単位で把握する
同じ商品コードの冷凍食品でも、製造時期や仕入先が異なれば、ロット番号や賞味期限が異なります。商品別の合計数量しか分からない状態では、どの期限の商品を何個出荷できるのか判断できません。そのため、商品コード、ロット番号、賞味期限、入庫日、数量、保管場所をひも付け、ロット・期限単位で在庫を把握します。
農林水産省の食品トレーサビリティに関する実践的なマニュアルでも、入出庫台帳に入荷ロット番号、入庫日、品名、製造日または賞味期限、数量、必要に応じてロケーション番号などを記録する考え方が示されています。倉庫内のどこに、どのロットが、何個あるかをデータと現物の両方で確認できる状態が、正しい出荷順を決める土台になります。
2.「先入れ先出し(FIFO)」と「先期限出し(FEFO)」の違い
FIFOは「First In, First Out」の略で、先に入庫した在庫から順に出荷する方法です。一方、FEFOは「First Expiry, First Out」の略で、入庫日にかかわらず、賞味期限や消費期限が近い在庫を優先して出荷します。つまり、FIFOは入庫日、FEFOは期限日が出荷順の基準です。
入庫順と期限順が一致している間は、どちらの方法でも同じロットが先に選ばれます。違いが表れるのは、後から入庫した商品に、より短い期限が設定されているときです。次の例では、FIFOとFEFOで出荷順が逆になります。
例:ロットAは4月1日に入庫し賞味期限が10月31日、ロットBは4月10日に入庫し賞味期限が9月30日とします。
| ロット | 入庫日 | 賞味期限 | FIFOの出荷順 | FEFOの出荷順 |
| A | 4月1日 | 10月31日 | 1番目 | 2番目 |
| B | 4月10日 | 9月30日 | 2番目 | 1番目 |
FIFOでは先に入庫したロットAを先に出しますが、FEFOでは賞味期限が近いロットBを先に出します。このように期限順が逆転する在庫では、FEFOのほうが期限切れ防止に適しています。
FIFOは「先に入庫した商品」から出荷する方法
FIFOの利点は、ルールが分かりやすく、入庫順に棚を並べることで現場でも運用しやすい点です。先に入った商品を手前に置き、後から入った商品を奥に置くなど、物理的な配置と出荷順を合わせれば、古い在庫の滞留を防ぎやすくなります。入庫順と期限順が常に一致する商品であれば、シンプルで有効な方法です。
ただし、仕入先や製造ロットによって期限が異なる商品では、入庫順と期限順が逆転することがあります。その場合、FIFOでは賞味期限の短いロットが後回しになり、倉庫内に残るおそれがあります。返品された商品の再入庫や、別拠点からの在庫移動がある場合も、入庫日だけでは本当に先に出すべき在庫を判断できません。
FEFOは「賞味期限が近い商品」から出荷する方法
FEFOでは、入庫日の新旧にかかわらず、賞味期限または消費期限が近いロットを優先します。期限の短い商品を先に出荷できるため、期限切れや残存期間不足による廃棄ロスを抑えやすい方法です。複数の仕入先から同じ商品を受け入れる場合や、複数ロットを並行して保管する場合に適しています。
一方で、FEFOを機能させるには、入庫時に期限を正確に登録し、ロットごとに在庫を分けて管理する必要があります。ピッキング時にも、システムが指定したロットと現物が一致しているかを確認しなければなりません。データ上はFEFOでも、作業者が取りやすい箱から選んでしまえば、期限の近い在庫が残ります。期限情報、保管配置、引当、照合を一つの運用として設計することが大切です。
3.冷凍食品はFEFOを基本に、出荷条件まで含めて使い分ける
賞味期限のある冷凍食品は、期限が近いものから出荷するFEFOと相性がよいといえます。ただし、すべての注文に対して機械的に最短期限のロットを割り当てればよいわけではありません。商品特性に加え、取引先ごとの納品期限や必要な残存日数も引当条件に含める必要があります。
たとえば、賞味期限まで90日残ったロットが最も期限に近くても、ある取引先が納品時に120日以上の残存期間を求めていれば、そのロットは割り当てられません。別の販売先や販路では出荷できる可能性があるため、期限の近い順に並べたうえで、納品条件を満たすロットを選ぶルールが必要です。
FIFOで運用しやすいケース
FIFOで運用しやすいのは、入庫順と期限順がほぼ常に一致し、同一商品の並行ロットが少ないケースです。仕入先が限られ、製造順に納品され、得意先ごとの残存期限条件にも大きな差がなければ、入庫順を基準にした運用でも期限の逆転は起こりにくいでしょう。
ただし、通常はFIFOで問題がない商品でも、例外入荷が起こる可能性があります。入庫時には賞味期限を記録し、期限順が逆転していないかを確認してください。期限が短いロットが届いたときだけFEFOへ切り替えられるよう、例外処理を決めておくと安心です。
FEFOを優先したいケース
FEFOを優先したいのは、複数ロットを並行保管する商品、仕入先によって期限設定が異なる商品、返品再入庫や拠点間移動が発生する商品です。冷凍食品ECのように品目数が多く、少量ずつ出荷する現場でも、期限帯ごとの残数を把握しながらFEFOで引き当てることが廃棄防止につながります。
実務では、賞味期限そのものに加えて「出荷停止日」や「要確認日」を設定すると管理しやすくなります。出荷停止日は、取引先の必要残存日数や輸送日数を考慮し、そのロットを通常出荷できなくなる日として設定します。要確認日は、出荷停止日より前にアラートを出し、販促、値引き、在庫移動、荷主への報告などを検討し始める日です。
4.賞味期限切れを防ぐ在庫管理の実践ポイント
FEFOは、システム上の並べ替え機能だけでは実現できません。入庫、保管、引当、ピッキング、出庫、棚卸を一連の業務として設計し、現物の配置と在庫データを一致させる必要があります。どこか一つの工程で期限情報が欠けたり、誤ったロットを選んだりすると、期限の近い在庫が残ってしまいます。
入庫時にロット・賞味期限を正確に登録する
期限管理の精度は入庫時の検品で決まります。商品コード、ロット番号、賞味期限、数量を納品書や外箱表示と照合し、倉庫管理システムへ登録します。
表示が読み取れない商品、納品データと期限が一致しない商品、ロット番号が不明な商品は、通常在庫と混ぜないことが重要です。確認用の場所へ隔離し、荷主や仕入先への照会が終わるまで出荷対象にしません。期限を推測して登録すると、後の工程で正しい引当ができなくなります。
期限順に取り出せる保管・ピッキング動線をつくる
ロットごとに保管場所を分け、外箱の期限表示やロット表示が通路側から見えるようにします。期限の近いロットを手前や取り出しやすい位置に置くと、現場の動きとFEFOの指示を一致させやすくなります。新しい商品を入庫する際に、既存在庫の手前へ置いてしまわないよう、補充方法も標準化しましょう。
期限順が逆転しているロットには識別ラベルを付け、注意が必要な在庫だと分かるよ鵜にするのが望ましいです。ピッキング時は、指示されたロットと商品のバーコードをハンディ端末で照合し、不一致なら作業を進められない仕組みにすると誤出荷防止に有効です。端末を使わない場合も、ロット番号と期限を二重確認するチェック欄や、作業者以外による検品を組み合わせます。
期限アラートと棚卸で滞留在庫を早期発見する
期限アラートは、賞味期限日ではなく、取引先ごとの出荷停止日から逆算して設定することがポイントです。出荷できなくなる直前に気づいても、販路の変更や販促を行う時間がありません。要確認日を設け、一定期間前に担当者と荷主へ通知すれば、値引き、キャンペーン、別拠点への移動、発注停止などを早めに検討できます。
定期的な棚卸では、帳簿数量と現物数量だけでなく、ロットと賞味期限も確認します。期限帯別の在庫数量、一定期間動いていない滞留在庫、出荷停止が近い数量、廃棄数、在庫差異を継続して見ることで、問題の傾向が分かります。結果は発注量や安全在庫、販売計画、需要予測の見直しにつなげましょう。
5.冷凍食品の保管・出荷を委託する際の確認項目
冷凍物流を外部委託する場合は、冷凍保管ができるかだけでなく、期限管理をどの単位と手順で行えるかを確認します。具体的には、商品コード・ロット・賞味期限・入庫日・数量・保管場所をひも付けられるか、FEFOでロットを引き当てられるか、取引先ごとの納品期限を設定できるかを確認しましょう。
あわせて、期限接近時のアラートと報告方法、期限不明品の隔離、ピッキング時のロット照合、返品再入庫時の扱い、棚卸の頻度も確認します。在庫データを荷主へ共有する頻度と形式、データと現物に差異があったときの調査方法、例外時に出荷可否を判断する担当者まで決めておくと、運用開始後の混乱を防ぎやすくなります。
委託先へ相談するときは、品目数、ロット数、月間の入出庫量、賞味期限の形式、得意先別の必要残存日数、返品の有無、繁忙期の物量変動を伝えると、実現可能な管理方法を検討しやすくなります。見積金額だけでなく、期限情報を現場作業まで確実につなげられるかという視点で比較することが大切です。
6.まとめ
FIFOは入庫日の古い順、FEFOは賞味期限や消費期限の近い順に出荷する方法です。入庫順と期限順が一致する商品ではFIFOでも管理できますが、後から入庫したロットの期限が短い場合は、FEFOでなければ期限の近い在庫が残る可能性があります。期限のある冷凍食品ではFEFOを基本にしながら、商品特性と取引先ごとの納品条件に合わせて引当ルールを決めましょう。
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